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最高裁判所第二小法廷 昭和48年(オ)68号 判決 1973年10月12日

上告人

森一二

右訴訟代理人

畑中広勝

被上告人

昭和石油株式会社

被上告人

三和石油株式会社

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人畑中広勝の上告理由一、二について。

原判決によると原審の認定した事実は次のとおりである。

上告人は、昭和四三年、本件(一)の土地(第一審判決添付物件目録(一)の土地)をその所有者から賃借して上告人が主宰する同族会社である株式会社森石油店(以下森石油と略称する。)に転貸し、その一部である本件(二)の土地(前記目録(二)の土地)を森石油から被上告人昭和石油株式会社(以下昭和石油と略称する。)に再転貸して同社に右地上に給油所設備を設置させた。そして、森石油は、右給油所設備を、昭和石油から賃借した被上告人三和石油株式会社より更に転借し、給油所を営んできた。しかし、その営業状態が思わしくなく負債がかさんだので、上告人は、昭和四五年、昭和石油には土地転借人としてなんら非違はなかつたにかかわらず、昭和石油の転借権を消滅させ給油所設備を撤去させてその跡地を他に利用することが得策であるとの考えから、森石油の代表者として自己破産を申し立て破産宣告を得、これを理由として上告人と森石油との賃貸借契約(転貸借契約)を解除し、右賃貸借契約の終了によつて森石油と昭和石油間の転貸借契約(再転貸借契約)も消滅したとして本訴に及んだものである。

右事実の認定は、原判決挙示の証拠により首肯することができ、右認定判断の過程に所論の違法はない。

ところで、賃貸借契約が賃借人の破産を理由とする解除により終了したときには、これに基づく転貸借契約も終了するのであるが、転借人になんら非違もないのに、賃貸人が、自己の都合により転借権を消滅させるため、賃借人会社を代表してその自己破産を申し立て破産宣告を得たうえ、これを理由として賃貸借契約を解除するようなことは、転借人に対し著しく信義則に違反する行為であり、かかる場合、賃貸人が、右解除により賃貸借契約を終了させても、転借人との関係ではその効力を生ぜず、転借権は消滅しないと解すべきである。なお、右の法理は転貸借契約と再転貸借契約との関係においても変りはない。

してみると、被上告人昭和石油の転借権が消滅したことを前提とする上告人の本訴請求は失当として棄却すべきであり、これと結論を同じくする原判決は正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(村上朝一 岡原昌男 小川信雄 大塚喜一郎 吉田豊)

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